お正月に見た映画③『リリイ・シュシュのすべて』

お正月に見た映画の感想を書こうというやつ。
3つ目は2001年公開の邦画『リリイ・シュシュのすべて』。監督は岩井俊二氏。
美しい音楽をバックに、少年少女の心の闇を描いた作品。
※ネタバレです。

リリイシュシュのすべて 予告

あらすじ

田園の広がる地方都市で暮らす中学生の蓮見雄一は、学校で突如荒れだした同級生の星野修介にいじめを受け鬱屈した日々を送っている。唯一の救いはリリイ・シュシュというアーティストの歌を聞くこと。自ら「リリフィリア」というファンサイトを主宰し、様々なリリイファンと交流する中で【青猫】という人物に出会う。
日を追う毎に過酷になっていく現実と、リリイの歌の世界とのギャップを埋めるように【青猫】と心を通い合わせていく雄一。そしてついにリリイのライブで【青猫】と対面する。 
リリイ・シュシュのすべて - Wikipedia

主人公・蓮見は人気アーティスト「リリイ・シュシュ」の大ファン。
自室に戻るとパソコンを立ち上げ、自らが運営するサイトでファンたちと掲示板で交流する。
蓮見は学校の優等生・星野と「リリイの曲が好き」という共通点から仲良くなる。
求心力のある星野のもとには他にも数人ほど仲間が集い、グループでよく遊ぶようになっていく。
夏休み、グループの中学生だけで沖縄旅行に出かける。しかし、旅行から帰った星野は豹変し、学校のいじめグループのリーダーになってしまう。
クラスの女子生徒・津田詩織の弱みに付け込んで援助交際をさせて金を運ばせたり、蓮見がひそかに想いを寄せていた久野陽子をレイプしたり。
津田詩織は苦しみに耐えかねて飛び降り自殺。久野陽子は頭を坊主にして学校に通い続ける。
リリイ・シュシュが好きなんだ」と笑っていた星野はもういなくなってしまったのか。
現実から逃げるようにリリイの歌やファンサイトに没頭する蓮見。サイトの常連「青猫」は蓮見の苦しみを理解し、励ましてくれた。
ある日、リリイのライブの開催が決定。蓮見は「青猫」と会場で会う約束をする。「青猫」は目印に青りんごを持っていくという。
ライブの日、蓮見が列に並んでいると星野が近づいてくる。手にはメールアドレスの書かれた青りんご。
「青猫」は星野だったのだ。
蓮見のチケットを奪い会場に入っていく星野。蓮見がサイトの管理人だということに気づいていない。
ライブ終了後の人混みのなか、蓮見は「リリイだ!リリイがいるぞー!」と叫ぶ。
いるはずのないリリイを探してどよめく観客たち。星野も夢中で探している。この混乱に乗じて、蓮見は星野をナイフで刺殺する。
この殺人事件が原因で悪いイメージがついてしまったリリイ。ファンたちは悲しみ、蓮見も自分のサイトを閉鎖する。
星野がいない学校の放課後、坊主頭の久野陽子が音楽室でドビュッシーの「アラベスク」を演奏する。
それはリリイが影響を受けたという曲。蓮見は陽子の近くでピアノの音色を静かに聴く。彼らの日常はこれからも続いていく。

ハッピーでもバッドでもない終わり

いじめの主犯格である星野が死んだからハッピーなのか?蓮見が殺人を犯してしまったからバッドなのか?
ラストでは蓮見が逮捕されるなどの描写はなかった(多分)けど、突発的な犯行だし時間の問題な気がする。
蓮見はかつての親友も、心の支えであったファンサイト「リリフィリア」も失ったという点をみればものすごくバッド。
「俺たちの戦いはこれからだ」エンドかな?生きていくなかでの山や谷を描いた作品?書いててよくわからなくなってきた。
人生にあるのは区切りとか通過点であって、ゴールがあるとすれば死ぬときだと思う。死ぬまでは惨めで辛いことも楽しいこともある。
陽子が弾く「アラベスク」を聴きながら「リリイが好きな自分」を蓮見が見出しているとすれば、それはこれから生きていく糧、希望なんだとうなと感じました。

みんな中学時代はつらかった?

この映画の感想記事をまわっていると、自分の中学生時代のネガティブな思い出を書かれている方が多いです。
「中学校めちゃくちゃ楽しかった!」って人、どれくらいいるんですかね。
私は中学校ぜんぜん楽しくなかったですね。別に学校が暴力に支配されたとかではないんですが。
校則とチェック体制がかなり厳しかったです。通学カバンやペンケースにキーホルダーとか付けるの禁止。授業中に抜き打ち検査。
眉毛はいじるの禁止で、先生が薄くないかどうかジーッと見てチェックしてました。
部活は強制加入だから、一部の文化系の部にヤンキーみたいな先輩が居座ってたり。
先生方は塾通いの生徒に対して良いイメージを持っていないようでした。「自分の勉強法がない人はダメだよ!」って。はああ。
受験対策もまともにやってくれなくて。学校で模試は一回もやりませんでしたね。自分の実力も高校のレベルもよくわからないまま受験しました。
思春期に学校で上から抑え込まれてたからかなりしんどかったですね。いじめられてたわけじゃないのに。今思い出しても「なんだろう、あの3年間」という感じ。

リリイ・シュシュのすべて」って、中学生のとき誰もが大なり小なり抱えてた憂うつ感を思い起こさせる映画なのかなと思います。
多感な時期に環境が大きく変わって、3年後には受験が控えてて勉強しなくちゃいけない。不安や焦り、強迫観念めいたもの。
そういうものが全くなかったって人は少ないんじゃないでしょうか。

「その人の音楽性は14歳のときによく聴いた音楽で決まる」

米ドラマ「クリミナル・マインド」に登場するセリフ。大人になっても他に好きな音楽ができるけど、14歳のときよく触れたものがベースになるとかなんとか。
正確なソースにたどり着けてないのでこの説の信ぴょう性はわかりませんが、自分の経験と照らし合わせると割とあってるのかなと思います。
14歳の頃の私はBUMP OF CHICKENが好きでした。「ユグドラシル」というアルバムを狂ったように聴いてました。
どこか優しいメロディとストーリー性のある歌詞に惹かれていました。「車輪の唄」とか「ロストマン」とか。
いろんな音楽を聴くようになった今も曲調や歌詞の好みはどれも似たような感じ。たまに「ユグドラシル」を聴くとすごく落ち着く。
映画に出てくるリリイの曲は透明感のある繊細な曲ばかりです。
蓮見や星野はもともと持っていた感性に多感な14歳という年齢がプラスされて、一層リリイに惹かれたのでしょう。

星野が豹変するきっかけになった沖縄旅行。星野は海で溺れて死にかけ、現地で知り合った旅行者が車に轢かれて死亡するというトラブルがありました。
おそらく蓮見より繊細で感受性の強い星野は、短期間にたくさんの「死」を感じとって変わってしまったのだと思います。
いじめグループのリーダーになってからも「青猫」としてリリイのファンサイトに通い、ライブに目印を持って参加したり、誰かと繋がりを求めていたようです。
蓮見が知らないところでたくさんリリイの曲を聴いたんだろうな、と思います。
沖縄に行かなければ、リリイのファンサイトで語り合い、互いに励ましあった人物が他ならぬ蓮見だと気づいていたら。
二人は好きな音楽を語り合う一生の親友になれたかもしれない。

総評

スカッとしたい人は絶対に観てはいけません。胸くそ悪い映画大好き!な人にもあまり向かない気がする。
合う人にはすごく合う映画だと思います。長く愛されている作品のようです。借りた中でこれだけブルーレイだったし。
ちなみに、ロケ地は栃木県足利市だそうです。

リリィシュシュのロケ地
抜けるような青空と鮮やかな緑、レトロな駅や工場などノスタルジーあふれる場所ですね。
映画のスタッフロールで使われている風景がすごくきれいでした。
観るなら是非ブルーレイをおすすめします。