お正月に見た映画④『きっと、うまくいく』

猛暑にやられたりゲームしてて、久しぶりの投稿になりました。
お正月に見た映画の感想を書くやつ。
インド映画の名作『きっと、うまくいく』です。

映画『きっと、うまくいく』(5/18公開)特別映像【公式】ボリウッド4

3 Idiots | OFFICIAL trailer #1 US/indian (2009)

シリアス、コメディ、ミュージカル部分全てが素晴らしい。
若者の自殺率など重い社会問題を扱っているものの決して暗くない。
日本語版の予告はかなり残念に感じます。婚活の話は出てきません。

あらすじ

大学時代親友同士だったファランとラージューは、ある日同窓のチャトルから母校に呼び出される。チャトルは二人に、ランチョーというかつての学友の消息がつかめたことを話し、探しに行こうと持ちかけるのだった。
10年前、インド屈指の難関工科大学ICE(Imperial College of Engineering)。それぞれに家庭の期待を受けて入学してきたファランとラージュー、そして自由奔放な天才ランチョーの三人は寮でルームメイトとなる。何をするにも一緒の3人はしばしばバカ騒ぎをやらかし、学長や秀才だったチャトル等から"3 idiots"(三バカ)と呼ばれ目の敵にされていた。
物語は10年前の大学におけるエピソードと現代のランチョーを探す3人の旅を織り交ぜながら、やがてファラン達も知らなかった彼の秘密に迫っていく。 
きっと、うまくいく - Wikipedia

世間や家族の期待を背負い、競争を強いられる学生たちが大勢のなか、心から工学を楽しんでいた天才・ランチョー。
チャトルは秀才ではあったけれども、教科書を丸暗記したり、テスト前に他の学生の妨害をしたりしていた。
ある日ランチョーに恥をかかされたチャトルは、校舎に日付を刻み「10年後、どっちが勝ったか勝負だ」と賭けをもちかける。
ランチョーは承諾するが、主席で卒業してから行方知れずになっていた。
大企業の副社長になったチャトルは、特許を400も持っている有名な科学者と交渉をするという。
一方、ランチョーは北インドの辺境で小学校の教師をしているらしいだが…。

人生は競争

物語の語り部ファランのモノローグ。

僕らにとって人生は競争。
必死で走らないと蹴落とされる。
僕の希望など誰も聞かない。

ファランは動物の写真を撮ることが好きな青年ですが、
厳格な父に「この子はエンジニアにする」と生まれてすぐ決められ、猛勉強を強いられました。
難関大学しても人生に希望を持っていない。また競争が始まるからです。
大学のイヤミな“ウイルス学長”は、新入生を鳥のカッコウに例えて競争を促します。

カッコウの)ヒナは誕生すると何をするか?真っ先に他の卵を巣から落とすのだ。
競争オワリ。
人生は殺し合いだ。これぞ自然の摂理。競争に勝つか、死か。

ウイルス学長は不合格者の願書をバラまき、それらを「割れた卵」と揶揄します。
生まれて猛勉強して、大学に合格しても、卒業して就職してからも、死ぬまで競争は続く。
ファランのように他にやりたいことがあっても、ランチョーのように工学を楽しもうとしても型にはまらないと押さえつけられる。
世間の目とか型にはめるとか、いかにも日本っぽい価値観がインド映画でも描かれていて驚きました。
私が日本で感じている息苦しさ、閉塞感は世界中の人も同じように苦しめているんだなと思いました。
義務教育は真面目に通って卒業して、次は高校。進学はストレートが望ましい。大学で留年は2年までが無難。
新卒で就職するのが当たり前。就職したら○歳までには結婚して家庭を持つ。
○歳の平均年収はいくら、子どもを育てるために必要な貯金額は…。
敷かれたレールから外れることが死よりもおそろしい。「割れた卵」と笑われるから。
順調にレールを走っている人も「割れた卵」を見て心の安定をはかっている。

そんな社会に一石を投じた本作。
自由奔放にふるまうランチョーは観ていて非常に痛快です。

Aal Izz Well(アール・イズ・ウェル)

本作の主題歌でありランチョーの人生哲学。セリフでは「うまーくいーく」と訳されています。
All(オール)ではなくAal(アール)なのがポイントらしい。

心はとても臆病だ。マヒさせる必要がある。困難が発生した時にはこう唱えるんだ。
「うまーくいーく」。困難を無視する勇気が出るんだ。

予告にも出てくるミュージカルパートは魅入ってしまいます。
何回見ても元気が出ます。

人生に行き詰まったら口笛吹いて唱えろ、うまーくいーく!
ニワトリは卵の運命なんか知らない。無事生まれるか、卵焼きか?
誰も将来のことなんてわからない。
バカな心に言い聞かせてやれ、うまーくいーく、うまーくいーく!

消せない将来への不安を蒸し返すよりも「たぶんうまーくいくさ~」と開き直った方がずっといい。
それで困難が去るわけではないけど、とりあえず無視することができる。
人生の壁はすぐに乗り越えられるものじゃないから、
毎日ぼちぼちやって、気が向いたら(気づいたら)クリアできてるぐらいが良いよね、みたいな。

インドの自殺率

Aal Izz Well』のミュージカルパートの直後、ジョイという学生が寮の自室で首吊り自殺をします。
壁には「I QUIT(僕は降りる)」の文字が残されていました。
2ヶ月必死に作った卒業制作を学長にバカにされ、提出期限を守れないことを理由に留年を言い渡されていました。
学長は「私は息子が事故死した翌日には教壇に立っていた」と期限延長を拒否。
ジョイは工学が好きな学生でした。中途半端なものは提出したくなかったのかも。
葬式で学長に抗議したランチョーは、後日学長室に呼び出されます。
ランチョーは資料をもとに、インドが自殺大国であること、とくに学生の自殺が目立つことを提示します。

気になったので、少し調べてみました。
2014年9月に、WHOが世界の自殺者数に関する報告書を発表したそうです。
www.huffingtonpost.jp

報告書によると、12年の自殺者が10万人を超えた国は11カ国。最多のインドをはじめ、中国、日本、韓国などが含まれたという。

12年に自殺者数が1万人を超えている国は、25万8075人のインドを筆頭に、中国(12万730人)、米国(4万3361人)、ロシア(3万1997人)、日本(2万9442人)、韓国(1万7908人)、パキスタン(1万3377人)など11カ国あった。

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WHO | WHO自殺に関する報告書
日本もインドも真っ赤です。
ただ、国によっては正確なデータを提出していないので、精密な統計を出すには難しいそうです。
若年層の自殺については

世界的には、15歳から29歳の若年成人では、自殺が全死亡の8.5%を占め、
主要な死因の第2位(交通事故に次ぐ)である。

とあり、インドに限った話ではなく世界的な傾向のようです。
『きっと、うまくいく』のインドでの公開が2009年。国内では自殺が社会問題化していたものと思われます。

「インドはITがすごくて急成長中!」という話はよくテレビなんかでよく見ましたが、
一部のすごい人達の下にたくさんの犠牲者がいるのでしょうね。そういう構図はどの国も同じなのかな。

総評

すごくおもしろかったです。1週間レンタルして3回観てしまうくらい夢中になりました。
コメディ映画ですがシナリオ構成がしっかりしており、伏線の回収が素晴らしいです。
「笑いあり、涙あり」という言葉がピッタリの作品だと思います。
本編が170分と結構な長さですが、テンポがよくてあっという間でした。
AmazonプライムやHuluなど配信サービスでも観られます。是非オススメです。

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